第2言語習得における暗示的知識
第2言語習得(Second Language Acquistion)の分野で、最も初期から研究が積み重ねられている分野が文法の習得についての研究です。この分野で、文法の習得において、暗示的知識(implicit knowledge)の習得が不可欠であることは学者の間でかなり定説になってきている。議論が分かれるのは、この暗示的知識と明示的知識(explicit knowledge)との関係である。そして、この事実は文法だけでなく、言語の全ての分野に当てはまると考えられる。
(1)「暗示的知識(implicit knowledge)とは何か:「誰からも意識的に習ったわけではないのに身についている、無意識的な知識。直感的なもので、言葉で明確に説明できない場合が多い。」(大修館書店「英語教育用語辞典」p140)。例えば、多くの英語のネイティブスピーカーは3人称単数現在のs、esの規則を説明できなくても、ほぼ100%正しく使える。このネイティブスピーカーが習得する直感的知識・能力は、その言語でリアルタイムにコミュニケーションを図りたいときに、第2言語あるいは外国語学習者が必要な知識・能力だということは明確だ。例えば、会話をしている時に相手の話す内容をいちいち明示的な知識に置き換える(日本語に訳し解釈するとほぼ同様)ことをしていたら、会話は成立しない。相手の話を直感的にしかも瞬時に理解し、その応対を直感的にしかも瞬時に行わなければならない。この一見「神業」のようなことを可能にするのが、言語の暗示的知識(implicit knowledge of language)なのだ。我々日本人は自分の母国語である日本語についてこの「神業」なる暗示的知識を全員もっている。

